ニュース・おしらせ

【Report】ウォーターセーフティーシンポジウム2018

2018年4月3日

たくさんのご来場ありがとうございました。当日のレポートです。

IMGP6210

<開催概要>

■主催;特定非営利活動法人日本ライフセービング協会(JLA)

■後援;消防庁、海上保安庁、日本赤十字社、

公益財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団

■協力;学校法人成城学園

■日時;2018年3月11日(日) 13:30~17:10

■場所;成城大学

■趣旨;東日本大震災では死因の92.4%が溺死、その災害から7年が経ち、東海・

東南海地震等の大規模自然災害の発生が危惧される今日において、国民の

安全・安心をより強化していくために、一般市民(バイスタンダー)やライフセーバーに期待する能力(責務)について、平時、有事の活動、公的救助機関との連携などもふまえて議論する。

■対 象;一般市民、ライフセーバー、関係諸団体

■参加数;300名

■参加費;無料

 

■内容;

【開 会】 13:30-13:40 主催者挨拶 JLA理事 /事務局長 川地 政夫

ご来賓挨拶 学校法人成城学園 学園長 油井雄二 様

 

【第1部】 13:40-15:50 シンポジストより発表

1)わが国における想定津波被害と防災減災

大阪大学大学院  工学研究科 教授 青木 伸一 様

2)東日本大震災時の消防の対応と今後の防災減災対策

総務省消防庁 国民保護・防災部 地域防災室長 天利 和紀 様

3)東日本大震災時の海上保安庁の対応と今後の防災減災対策

海上保安庁 警備救難部 環境防災課 防災対策官 吉田 勝昭 様

4)防ぎ得る死~Preventable death

岸和田徳洲会病院 救急救命センター長 医師 鍜冶 有登 様

5)自然災害に備え、私たちができる防災・減災への取り組みについて

公益財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団 事業部 林 未来 様

6)災害に対する国民の自助共助力の向上にむけて

日本赤十字社 神奈川県支部 内田 直人 様

7)自然災害に対する国民の自助共助力をともに高めていくために

JLA副理事長/ライフセービング教育本部長 松本 貴行

 

【第2部】 16:00-17:00 (60分)

パネルディスカッション

<テーマ>

自然災害に対して一般市民(バイスタンダー)、ライフセーバーに求めるもの

第1部のシンポジスト7名に加え、次の2名が参加しました。

<パネリスト>

JLA溺水防止・救助救命本部副本部長 菊地 太

<コーディネーター>

JLA理事/JLA溺水防止・救助救命本部長 石川 仁憲

 

【閉 会】 17:00-17:10 総括 JLA理事長 入谷 拓哉

 

㈰会場席中通路より

 

■シンポジスト発表要旨;

 

【第1部】

1)わが国における想定津波被害と防災減災

大阪大学大学院 工学研究科 教授  青木 伸一 様

  • 一生のうちで千年に一度クラスの大災害に遭遇することは十分ありえる。
  • 防波堤などのハードが整備されると、人は油断してソフト防災力が低下する。
  • ハードの整備とともにソフトに求められるレベルも上げなければならない。
  • 海を遠ざけることなく、ソフト防災力を高めていくことが重要。

 

 

㈫天利様2)東日本大震災時の消防の対応と今後の防災減災対策

総務省消防庁 国民保護・防災部 地域防災室長 天利 和紀 様

  • 大規模災害時、公的機関も被災するため、行政だけでは被災者を十分支援できない。
  • 災害の被害の軽減のためには、自助・共助による防災活動が重要。
  • 自助、共助、公助のバランスの取れた防災対策に、地域、近隣単位で取り組むことが重要。そのためには、平時から消防団や自主防災組織等の地域の様々な防災組織との関係構築が必要。

 

㈬吉田様3)東日本大震災時の海上保安庁の対応と今後の防災減災対策

海上保安庁 警備救難部 環境防災課 防災対策官 吉田 勝昭 様

  • これまでの教訓を活かし、防災減災に取り組むためには、装備(ハード)と関係構築(ソフト)の強化が必要。
  • 横断的な関係構築が必要。

 

 

㈭鍜冶先生4)防ぎうる死~preventable death

岸和田徳洲会病院 救急救命センター長 医師 鍜冶 有登 様

  • 1995年以降、緊急時救急対応が劇的に変化 DMAT発足。
  • 阪神淡路 →クラッシュ症候群。
  • 東日本→津波。
  • 救命の連鎖には医療機関だけでない関係が必要→医療機関は最後でしかない、命を繋がなければならない。
  • 防ぐ事のできる死にいかに対応できるか→プリベンタブル・デス。

 

㈮林様5)自然災害に備え、私たちができる防災・減災への取り組みについて

公益財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団 事業部 林 未来 様

  • 11では東北沿岸部のB&G海洋センターが壊滅的な被害にあった。
  • あまりに大きな災害であったため、機能が麻痺してしまった市町村もある中で、災害対応に多忙な市町村と、直後の連携は困難だった。
  • 民間の公財ができること。

→防災減災のための地道な教育活動(反復的な学習、体験を伴う学習の重要性⇒学校教育に取り入れることが近道)。

→安全を確保した自然体験活動。

→セルフレスキューの普及。

→水辺の安全教育。

  • 東日本大震災の津波からの生還事例(小学生や老人)からわかる通り、災害時は「自分の命を自分で守る」ための正しい知識と技能、「知恵」が役立つ。
  • 当事者意識の認識。
  • 体験から正しい知識を学んだら、それを一人でも多くの人に伝えていくことの重要性。
  • 自然の怖さを正しく認識した上で、楽しく親しんで欲しい。

 

㈯内田様6)災害に対する国民の自助共助力の向上にむけて

日本赤十字社 神奈川県支部  内田 直人 様

  • 救急法、水上安全法等の講習受講を促す。
  • 防災について、正しい知識を得ると共に、自分で考える事が大切。
  • 考えた先に、できる事を知っておく、備える(主体的に)。
  • いのちをも守り(自分自身のいのちをも守る:自助)、そしていのちをつなぐ(守られたいのちを他者へ繋ぐ:共助)ことが大切。
  • 児童や生徒等青少年に対しての防災教育が必要。
  • コミュニケーション、おもいやりが大切。
  • 自助、共助、防災減災の輪を、世代を越えて社会全体に広げる(4歳からの防災教育がスタートする)。

 

㉀松本副理事長7)自然災害に対する国民の自助共助力の向上にむけて

日本ライフセービング協会 副理事長/ライフセービング教育本部長 松本 貴行

  • 数値的な解釈に留まらず、日常の営みが一瞬にして奪われた事故が22,102件起きたという認識が大切。
  • 事故を未然に防ぐ視点のライフセーバーとして、国民一人一人に対する心構え、事前準備に寄与できるよう、教育に重きをおきたい。
  • 11以降「人と海を繋ぐ懸け橋になる」をテーマに継続的に関わってきた。中でも国民の自助共助への働きかけとしてBLSやWS教育への取り組みを強化。日本臨床救急医学会等とともに心肺蘇生教育の在り方について文部科学大臣宛に提言をまとめた。また千葉県御宿町での防災教育への取り組みに参画してきた。
  • 日本の沿岸域の教育機関や施設などへ、ライフジャケット配備とともにWS教育をセットとして広めていきたい。御宿小学校の取り組みはこれからの先駆けとなる。
  • 中学校学習指導要領の改訂に伴い、心肺蘇生の積極的な取扱いが期待され、体験活動の推奨もより一層、防災教育の追い風となる。官民一体となって学校教育とともに継続的な関わりと質をあげていけば、有事の際に能動的に動ける人材(セルフレスキュー、防災ボランティア)の育成、減災力強化につながる。

 

 

■パネルディスカッション要旨:

 

㈷パネラー

 

【第2部】

<テーマ>

自然災害に対して一般市民(バイスタンダー)、ライフセーバーに求めるもの

(パネリスト敬称省略)

 

石川:ハード防災は限界がきているか?

青木: 防災の基本はソフト防災であるべき。日本のようにハード整備が進んだ国でどうやってソフト防災力を高めていくかがこれからの課題。

㉃青木先生

石川:日常的に一般市民にはどんな知識や意識が必要か?

天利: 地域の様々な防災組織がそれぞれの持てる力を出し合って連携する事が大事。地域で発生する可能性のある災害を想定して、地域の防災に関わる組織や住民が災害時にどのような役割を果たすのか事前に話し合いをした上で、訓練を行うべき。

吉田:災害が身近で起きるという意識が大事。ある日突然おきる。災害時はいつもと違う。安易に考えず、初動はプロに任せてほしい。

㈹吉田様

鍛冶:災害はいつおきてもおかしくない。ライフセーバーは平時から災害に備える意識を高く持てるのでは。

石川:日常的に教育できる意識づけとは?

林 : 地域に合わせた防災は市町村で!長年B&Gは社会教育の分野で子供達に海との接し方を伝えてきたが、「水が嫌い」「怖い」と思っている子供達にこそ、正しい知識を伝えたい。海を好きになってもらいたい。よって、学校教育にプログラムを落とし込むが大事。B&Gは地方自治体・教育委員会との連携が図れているため、協力要請をし、「水辺の安全教室」を特に震災以降強化して全国展開している。

内田: 災害を身近に感じてもらうための努力が必要。生活拠点の地域情報として伝達する。学校教育現場になじませるために、教員への意識づけが大切。具体的に校長会に行き、防災教育の推進を図っている。また、来年度からは県教育委員会の運営する、教員の選択講座の中に防災教育プログラムが加わる予定。

松本: 自然環境の中で活動する際など、指導者だけに限らず、子ども達も同じ目線で有事の際にはどう動くかを考えさせることも必要。さらには低年齢期にそれをどれだけ反射的に動けるかをすり込んでいく教育が大切。

石川: 災害予測は、あてにならない?

青木: あてにならない。災害は全て想定外である。シミュレーションはあくまでも一つのシナリオを示しているにすぎない。あてにならない、と思っておく事が大切。

石川:普段の備えに対して、日常的に行えることは?

菊地: 有事の際の足並みを普段から地域行政や、公的機関と揃えることも大切。(知っておくだけでも違う)。日頃の津波避難訓練は有効。JLAは地域クラブに、地域との連携、普段から顔がみえる関係構築をお願いしている。

天利: 災害対策基本法の改正により、地域コミュニティでの共助による防災活動を地域住民が話し合って策定する地区防災計画という仕組みができた。こうした仕組みも活用して、まずは市町村と地域の防災組織や住民の皆さんの間で災害時の対策について話し合いをして、顔の見える関係を構築してほしい。

吉田: 一般市民との交流をもっと強化したい。訓練はとても大事。あらゆる団体を通じて、まずは行動する事が大事。

石川: 有事が起きてしまったあとは?

鍛冶: まずは自分の身を守る事が大切。災害医療は、要救助者をいかに減らすかが重要。公的機関が発する情報を共有する。自分を犠牲にしない。

石川: 一般市民が知っておくべき知識は?FAやBLSを知っておくのは必要か?

鍛冶: クラッシュ症候群など、災害現場特有の現象は難しい。FAやBLSは備えるにこしたことはない。

㈱鍜冶先生

石川: 災害時の心のケアについてはどうか?

内田: 被災者の心のケアのみならず、有事に現場に入る日赤関係者は「心のケア研修受講」を義務付け、日頃から啓蒙している。また、災害救護活動後も惨事ストレスがないか医療機関受診等のチェック機能がある。

㈾内田様

菊地: ライフセーバーも惨事ストレスについて学んでいます。実際に水辺に立ち、自然の変化に敏感で、水辺の自然環境を熟知したライフセーバーが、機能別消防団として活動できたら、平時は、地域の人を対象にした水辺の安全普教室や、BLS講習会、惨事ストレス対策などを通じて地域の方々と顔の見える関係を築き、更には水辺の楽しさや危険なものを普及することができます。また、大規模災害時は、平時からの関係ら地域の消防団として若いライフセーバーの力を発揮し、様々な地域貢献活動ができると考えます。

㈴菊地副本部長

石川: 学校教育だけでなく地域との繋がりをどう考える?

㉂コーディネイターとパネラー

松本: これからのライフセーバーはBLSやWSをしっかりと地域の方々に伝え、事故を未然に防ぐ「本当の未然」に着手するキーパーソンになるべき。

林 : 全国で約170ヵ所のB&G海洋センターが避難所指定されている。B&Gは市町村行政、教育委員会との連携が基本なので、幸い一般市民との共有もできている。地域で行う避難訓練に併せて、B&G海洋センター設備(体育館)を使用して、避難所を開設するための訓練や併設するプールを活用した体験学習など、一般市民を対象として有事のシミュレーションができている。来年度からは防災イベント等も拡充していく予定。

㈲林様

石川: 有事の際のライフセーバーの可能性、公的機関との連携についてどうか?

菊地: 審査会を通じた地域消防機関との顔の見える関係だけでなく、大規模災害時を想定した海上保安庁とのヘリ連携訓練などが展開出来れば、リペ降下の誘導や誘導ロープの確保、ヘリ救助員の活動しやすい環境を作るため要救助者の集結、降下しやすい場所を誘導するなど、ライフセーバーには公的救助機関とをサポートしていく可能性が散在しています。はじめは、どんな可能性があるか、話し合いからで良いので始めていけたらと希望します。

吉田: 大規模災害のときに、ライフセーバーのサポートがいただけるのは、救助の可能性が広がると感じる。

 

石川: 最後に、皆さんからひと言。

菊地: JLAのこれからは、関係行政や医療機関、関係民間団体と連携を伴う具体的な行動として、津波避難訓練や審査会、福祉を通した共同事業などを進めていきます。そこには地域のライフセービングクラブの協力が必要です。水辺の安全を普及させるために関係各所の皆さんと一緒に構築していきましょう。

松本: 日本の沿岸域に対し、ライフジャケットの普及をWS教育とともに普及させていきたい。ライフジャケットは命を守るデバイスであることもさることながら、行方不明者の命を「帰るべき場所に帰す」意味もあることを忘れてはならない。今後もより一層、ライフセービングという命を見つめる視点を大切に、地道に取り組んでいかねばならないとあらためて学びました。

㈻松本副理事長

青木: 震災から23年を経て、神戸出身の学生でも被災経験のない学生が多ほとんどであるが、意識は比較的高い。それには家庭や地域コミュニティの影響が大きいと思う。ライフセーバーは人の命を救いたいと思う若者であり、その心を伝えていければ防災意識を高めることはできると思う。

天利: 害時には、消防団が発災当初から長期にわたって地域に密着した幅広い役割を果たしているが、団員数が毎年減少している。人命救助技術をもつライフセーバーの皆さんに消防団に参加してもらえれば大変ありがたい。また会場の若い学生の皆さんの加入にも期待している。

㈺天利様

吉田: 災害がおきたとき、最後まで生き残る人は、気持ちが強く、前を向ける人である。必ず助けにいきます。折れずに待っていて下さい。

鍛冶: 医師でありライフセーバーである。防災の目を持つ意識をこれからも高く持ちましょう。海を好きになりましょう。

林: 自然はもちろん怖いが、日本は海の恩恵を受けて発展してきた島国で海が近い。正しく自然の怖さを知って、同時に楽しさや素晴らしさも知ってほしい。ライフセーバーの皆さんなどその楽しさを知っている大人は、日本の未来を担う子供たちに伝えていって欲しい。海を楽しみ、畏敬の念をもって、海を次の世代に繋げていかなければならない。

内田: ライフセーバーの持つ経験、エネルギーは水辺だけでなく、あらゆる場面で貢献できるはず。いろんな団体、皆で連携をしながら協力できると良い。

石川: 本日の気付きを多くの人々で共有する事が大切。

 

■総括要旨:

入谷理事長: 本日のテーマにおいて教育というキーワードが出てきた。その教育に必要ものが笑顔ではないか。震災を思いながら、命を繋ぎ、笑顔の溢れる生活を作り続けるために、教育と地域連携を発展させたい。それが防災、減災につながる。

 

■アンケートの主な内容:

・様々な分野の専門家のシンポジストの講演を聞き、11の出来事を風化させてはいけないことを再認識した。

・11を教訓に自助、共助に対する更なる意識の向上が必要であると感じた。

・大規模災害の発災直後においては、公的救難防災体制勢力は機能しないことを前提とすると、海辺の安全防災は平素からの地元行政当局による自助共助が重要であることは改めて確認すると共に、忘れてならないのは地元住民以外の各種マリンレジャー等のために訪れている人たちの安全を守ることも重要である。

・災害の発生時、発生直後、救護活動時に区別して対応を考えるべき。

・東日本大震災後、子供にライフセービングのジュニアに通わせていいのか悩みましたが、現在は本人の意思で高校のライフセービング部に所属して続けてます。子どもを通じてもう一度災害について再認識して行こうと思う。

・11の災害を改めて考えることができた。シンポジウムの内容をクラブ員へ伝えていこうと思う。様々な角度から話を聴くことができてとても良い経験になった。

・自身も公的救助機関に身を置く者として、ライフセーバーとして大変貴重な機会となった。やはり重要なことは災害が起きる前の「教育」であると感じた。

・スポーツメーカーに所属しているが、ライフセービングはスポーツとしてとらえていたが、シンポジウムを通じてライフセービングはスポーツの枠を超えた存在であることを再認識した。

・津波から逃げることができても、海からは逃げられないとういう言葉が印象的であった。消防団員の数が減っている状況で、ライフセーバーとの連携の必要性も印象に残った。

・どの発表も非常に興味深く、考え、学ぶものばかりであった。特に教育分野の重要性について共通されていた。

 

㈶パネリスト集合